忍者ブログ
2011~2012年に連載された桃森ミヨシさんの「皇子かプリンス」ファンサイトです!
comic
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

a 皇子かプリンス (3)
桃森 ミヨシ (2012/8/25)
■新書判/224ページ
■定価:420円(税込)
■収録作品/皇子かプリンスnobel 16~23+24

高仁様と晴ちゃん、2人そろっての祭祀に感動するつなぐ。でも皇様から2人を選別してほしいと新たな課題が──。2人の皇子と向きあい、必死に考えたつなぐが出した答えは──? 高貴なラブコメ、ここに完結!

【収録作品】描きおろし それぞれのボンボニエール



今だからこそ考える、日本が持つ価値観





出ました3巻。そして最終巻です。

最後まで読んだ率直な感想としては
「非常によくまとまっているなあ!」です。それはもう打ち切りとは思えないほどに。
そうなんです、打ち切りなんだそうですよ…、この事について桃森先生がとても真摯に読者にむけて説明なさっていて、なおかつ編集部にも感謝なさっている。その言葉が全然きどってなくてとても素直で、ああやっぱり桃森先生のこと好きだなあと思いました。ぶっちゃけすぎだろ、とも思いましたが(笑
たしかに恋愛面での話は打ち切りな感じで、もっといっぱいあったであろう皇子とのきゅんきゅん話はまったく足りません。
でもこのマンガがたった3巻までで非常に完成度が高く感じるのは、やはり一番のテーマとなる部分は恋愛ではなかった事の証拠であろうと思います。

韓国が天皇陛下を侮辱したりいろんな問題が浮き彫りになって、ここにきて初めて「天皇陛下の役割ってなんだろう?」と考えた若い人も多いのでは。それまでは日本人にとって天皇とはちょっと遠い存在でした。というより世代によって価値観が大きく変わる。お年寄りにとっては神にも等しいし、母親世代は美智子様や雅子様、紀子様のご成婚でまた別の思い入れがあるでしょう。私世代になるとそれも記憶になく、なんとなく存在が遠くなって来て、今の若い人にとってはまったく接点がなく、教科書で習う「象徴」としての漠然としたものでしかない。
とてもわかりにくい天皇制度の存在意義みたいなものを、とても分かりやすく表現できている創作マンガは他に無い、と私は思います。ああだから日本人は陛下を侮辱されてこんなに怒ったんだな、というのが理解できた。私も腹がたっていたけど、その理由をはっきり説明できなかった。でもこれを読んで、根本的な価値観というか、この国の人の生き方そのものの概念だったんだと、感覚で分かることができたんです。

そういう意味で、短いものではありますが、このマンガは非常に意味のあったような気がします。
小さいところから意識を変えている部分はすごくあると思う。とくに年齢の若い読者の。

しかしだからこそ娯楽恋愛マンガとしてはダメだったのかもしれないな、とも思いました。
皇子二人は魅力的で性格も面白かったし、キャラもたっていました。設定も面白い、テーマもすばらしい、メッセージ性は申し分ない。
足りなかったのは主人公との恋愛部分においてのときめき、それに尽きると思います。
ただ逆に考えると、主人公が恋愛に特価した子で、皇子が大好きー!とストーカーなみに追いかけ回す子だったら、大切なメッセージはまったく伝わってこないむしろ腹立たしいマンガになったかもしれません。また、皇子が主人公に入れあげて、公務そっちのけで恋愛に重視するような男だったら、これまた台無し。
現実に即していたからこそ、娯楽としての軽い恋愛マンガには発展しなかったのが原因のような気がします。


しかしマンガとしての完成度、とくに見せ場はすばらしかった。
二人の皇子が記者会見と生徒会演説でそれぞれ相手を尊重し、それがリンクするところ。
無私で行った二人の姿。
そして最後の書き下ろしでの「無私」というもののまとめ方。
高仁、晴仁、つなぐ3人がそれぞれ「無私」の気持ちで相手の為にした事…それが物語の最初の謎に対する答えにもなっている。
完璧な構造です。
最後の書き下ろしがあるのと無いのとではかなり印象が違ってきます。


いろんな意味でいいマンガだったし、惜しいなあ。
このマンガはすごく桃森先生の評価を上げたし、逆に人気面では下げたかもしれない。
「悪魔とラブソング」や「桐島、部活やめるってよ」のコミカライズでも思いましたが、桃森先生はキャラクターの心理描写がうまいんです。そしてその感情が、恋愛面だけに向かっていない。人間として持つ嫉妬心や、尊敬の心、相手に尽くす心、独善、誇り、社会性。
そういった難しいことを描ける作家さんなのです。
しかし娯楽としてのマンガを描こうという気概も見える、とくに皇子かプリンスは一見すれば乙女な逆ハーです。きゅんきゅんさせる為にがんばろうというサービス精神は、ハツカレでも証明済みです。
ただ、今その両極にある二つのバランスが取れていないのかもしれない。
勝手なことを言いますが、桃森先生は雑誌を変えて、ラブコメ部分を捨てる勢いでもっと大人向けの本格的な深い物語に特化したものをやるか
社会性は捨てて、単純で分かりやすいハツカレのような、心理描写だけに特化したものを描くか、どちらかをせまられているような気がしてなりません。
もちろん一番いいのは両極にあるその二つのバランスが取れること。その時ものすごいヒットを生み出す可能性も感じながらも、今ちょっと試行錯誤されている感じもしてしまいます。
作品のたびに変化を見せている作家さんですから、次回作がどんなものになるかすごく楽しみです。私の言ったようにどちらかに特化するのか、それともまったく違う挑戦をなさるのか、次回作の発表が待たれるところです。

 


 

■お知らせ

●ファンサイト開設●


 「桃森ミヨシ&鉄骨サロ先生ファンサイト」はこちら


漫画家の桃森ミヨシ先生、鉄骨サロ先生の非公式ファンサイトです。

最新の雑誌掲載情報、実写化情報、先生のインタビュー記事、動画、過去作品アーカイブ、感想ページなどできうる限りの情報をのせています。


このブログの人気記事合格桃森ミヨシ先生、鉄骨サロ先生のサイン会

合格200m先の熱 7話 今月は真霜くん祭り!どピュアどヘタレ炸裂!!!!

合格赤面立89%の異名を持つ桃森ミヨシ先生、真骨頂の新連載「200m先の熱」
PR
a
皇子かプリンス (2)
桃森 ミヨシ (2012/4/25)
■新書判/224ページ
■定価:420円(税込)
■収録作品/皇子かプリンスnobel 8~15

皇子達の素顔にドキっとしたり本音を知って感動したりしながら二人の皇子を繋ぐために奔走するつなぐ。でも二人は皇子としての務めに悩み、いがみ合います。そんな中、つなぐがとった行動で高仁様と晴ちゃんが…!?


「どっちも」という価値観



  ぜんぜん違うもの どっちも受け入れて

  どっちも輝かせる力があるってことなんだから





出ました2巻。
雑誌で読んでる時はそうは思わなかったんですが、コミックで通しで読むとわりと展開が早かったんだなあ…と。
展開というか、話の進んでいく流れが。
他の方もブログで、早く終わらそうとしてる?とおっしゃってた方がいましたが、そうなのかなあ。
いろいろと障害もあるのかもしれませんが、本当にいい作品だと思うので長く続いてほしいんですが…。でも桃森先生の言いたかったことはすでに(まだコミックになってない雑誌掲載分で)描かれたのかなという気もするんですよね。
ここまで分かりやすく、丁寧に、上から目線のお勉強や理窟ではなくいろんな事を知れて、いろんな想いが伝わってくる本当にいい作品だと思います。小難しくするよりよっぽど大変なことをされてるんじゃないかと。誰にでもわかるようにかみ砕くというのは、逆に難しい気もしますしね。

今回、高仁様がかわいさ爆発してました。
こんなかわいい高仁様を前にしてつなぐの出した結論からすると、結局どっちともくっつかない可能性も十分に考えられます。
高仁様は自覚ないけど、これってもうつなぐを好きになりかけてるし、晴ちゃんも依存的とはいえつなぐに惚れてる。だけどそんなおいしい状況よりも優先することが他にあるというのは、つなぐが無私を体現しているから、そして女の子としてまだ目覚めてないとも言えるわけで。
私としては晴ちゃんに脈はないと思ってるんで、ぜひ高仁様と結ばれてほしいですけどね~。晴ちゃんはわんこみたいで可愛いですけどね。

でもどう見ても晴ちゃんの方が実は国皇に向いてる、実は資質があるという流れなんです。
高仁様は2巻の最後で非常にもっさりとした残念なお姿を見せていますが、資本主義の塊なこっちが本性なわけですから。
本当に二人を足して割ればちょうどいいんですけどね。


つなぐの口癖だった「どっちも」はいろんな意味を含んでいます。
1巻の冒頭で出た「どっちも」というセリフ。その時はただ優柔不断な性格を表すのみだった。けれどここにきて、このマンガのテーマとも言えるような大事なセリフだったのかと気付かされました。
「どっちも」というのはニュートラルということ。
日本人は調和することの才能に長けている。昔から和を大切にし、自分の主張を殺し相手を尊重する。それをお互いがやるから、全体的な意見を取り入れることが出来てうまくまわる。そういう文化があるのです。
どちらか片方だけがそれをやり、もう一方は自分の主張を押し通す、という関係性になると均衡は崩れ、独裁をうみます。
でも今は日本だけ、という情勢でありません。世界の人とつきあっていく世の中。その中で自分の主張をしないことは無能であるという価値観になりました。
そうではなく、調和するということ「どっちも」はとてもバランス感覚のいる、価値あるものなんですよね。
いろんな人がいて、いろんな役割がある。つなぐのようにあまり目立たない、評価もされないところにこそ、支えとなる昔からの基盤があるのだと思いました。
そして願わくば、物語として、つなぐの女の子としての「どっちも」が崩れた姿も見たいなあ。「どっちも」じゃなくて「どっちか」になる、まさに皇子かプリンス。そんな時もくるんじゃないかと。

a
皇子かプリンス (1)
桃森 ミヨシ (2011/12/22)
■新書判/216ページ
■定価:420円(税込)
■収録作品/皇子かプリンスnobel 1〜7


「我慢」という<萌え>


自分に嘘をつかず、すべてさらけ出してありのままでいよう。
…そんな現代の価値観が通じない世界「皇室」。
そこに生きる皇子達はとても我が強く時にわがまま、なのに
常に自分を抑えなければならない葛藤と戦っているとしたら…

その姿は 萌えです。

このマンガ、皇室をモデルにしてたりなんだかんだで色々言われそうな気がしなくもないのですが
私にとってはもう、「皇室にこんな萌えがあったのか~~~!!!!」
というよだれもの新ジャンルに過ぎませんw
そう、これって乙女萌えマンガだと思うんですよ!

タイプが違えど二人とも個性のつよい皇子達。なのに「無私」である事を強制される立場。
かたやその役割から逃げたヘタレ、もう一人は使命をかたくなな程に全うしようとしている一途な俺様。
そんな二人の皇子をつなぐ役割を任されたのは、自分を抑える事が苦でも何でもない、よく言えば柔軟性のある悪く言えば自主性のない主人公、つなぐ。

皇子達にとって主人公のその素質はとても皇家向きに見え、ある意味お手本にもなりえる。
逆に主人公にとって、自主性バリバリの皇子達は、変わるべき自分の指針になる憧れの対象。
お互いが影響しあって変化していくんでしょうが、
もう私の視線はもっぱら、つなぐによってだんだん素が引き出されていく高仁様の葛藤姿にしかいかないんですw
連載中の高仁様はそれはもう真っ赤になったり大変な事になってきとるわけで、これはもう本気でつなぐを好きになったらどうなってしまうのとか想像すると、それはも~苦しいでしょうなこの性格と立場だから!
とニヤニヤが止まらなくなるわけです。

ヘタレ皇子晴ちゃんの方は、深層心理ではまだわかりませんが、今んとこ自分を抑える葛藤は放棄しているもよう。
でも彼も相当ためこんでるみたいだし、元々は引きこもりになってしまう程に心が繊細で正直な人。
「無私」というのがテーマの一つになっているけど、それはまんま自分が無いっていう意味ではなさそうで、つなぐを通じて高仁様はその答えを探ってる。

なんとなくですが、雑誌でずっと読んでて(今ちょうど2巻の最後くらい?)
高仁様を変えるのはつなぐ、つなぐを変えるのは晴ちゃん
のような気がしてるんですよねー。
何か変化があるきっかけがいつもその関係性にあるっていうか。
じゃあ晴ちゃんは誰が変えてくれるのってことなんですが、それはまだ見えてこない。
奴はまだヘラヘラちゅーばっかしてますからねw

桃森先生にとっては3作品目になる連載、ちょうどハツカレと悪ラブの中間くらいの雰囲気に感じます。初々しいラブ(とくに高仁様)あり、自己改革あり。
そこにちょっと皇室のことや社会学も入るけど、読みにくさはまったく無く
きちんと少女漫画というエンターテイメントに仕立てているのはさすが。

テンポよくさらっと読めてしまうけど深い、そんなお気に入りのマンガがまた一つ増えました!v
| HOME |
このブログについて
2011年7月より2012年7月までマーガレットで連載された、皇子かプリンス/桃森ミヨシさん(著)の感想を好き勝手に綴るブログです。
ネタばれを多分に含みますので嫌な方はご遠慮下さい
皇子かプリンス とは
コミック全3巻 発売中

この国の皇は「無私」である事を強要される立場。
しかしその息子である双子の皇子は、我が強く、超仲が悪い。
そんな二人の皇子の仲立ちを任されたのは"自分が無い"と言われる程に我欲の薄い女子高生「つなぐ」。彼らが影響しあい恋をし変わっていく、学園&皇室ラブコメ。
「本当の無私」とは何か、という事がテーマになっており、皇子はそれを主人公から学ぼうとしている。また主人公も皇子達から「自己確立」を徐々に学んでいる。
架空の日本が舞台ではあるが、皇家の設定は日本の皇室をモデルにしている。
リンク
最新記事
(09/04)
(07/07)
(06/26)
(06/16)
(05/26)
最新コメント
ブログ内検索
プロフィール
HN:
オガクズ
性別:
女性
自己紹介:
料理関係ライター、医療関係雑誌編集者を経て現在はフリー。先輩のアシスタントとして医療関係の裁判傍聴だけは続けている。食と健康に関する興味から、学校給食について調査中。彼氏と共に東京在住。心のオアシスはコミック読み。
学生時代に「ハツカレ」で桃森ミヨシのファンになる。
辛口と甘口とファンの欲目と希望と萌えの混ざった感想を好き勝手にだらだらと綴っている。
バーコード

Copyright©「皇子かプリンス」のページ:All rights reserved
Template Design by Rinmaru

忍者ブログ [PR]